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遡行開始地点は正面が岩場となっていて、沢がクランク状に回り込んでいます。
その曲がり角の落ち込みに毛針を投入しようとすると、
岩陰から毛針が出たとたんに風圧を受けて、手前に押し戻されてしまいます。
無風のはずなのですが、どうやら水が落下して起こる風圧が局部的な気流を作り出しているようでした。
何回プレゼンを繰り返しても、岩陰から毛針が出たとたんに、押し戻されます。
仕方がありませんので、少し遡上した地点から、落ち込みの50センチほど上流部に毛針を落とし、
いったん白泡の中に毛針を沈み込ませ、水底からニンフが羽化のために水面に浮き上がるイメージで、
スイスイスイと3回アクションをつけ、岩陰で見えなくなる寸前でピックアップをすると、
ブルブルという感じで、良型のヤマメがヒットしました。25センチ弱のきれいなヤマメです。
2枚目の写真を撮るとともに、今晩の酒の肴にキープしました。
私は、家族の人数分…5匹だけは、持ち帰ることにしています。

ここのポイントは、終わりなので、ヤマメの処理をここですることにしました。
・ヤマメの頭部を指パッチンすると、気絶します。
・ステンレスのナイフで素早く腹を割き、ワタを抜いて血を流して
・クマザサの葉を魚体の両側に貼り付け、頭部と尻尾にもクマザサを巻き付けて、葉の軸の部分を巻き付けの下に差し込んでOK。
これで、ボウズのプレッシャーからは解放されました。
余裕が出てきて、落ち込みの上手に移動しました。
もう一つのポイントは、対岸に接している岩周辺です。
偏光グラスを通して、観察してみると、岩に流れが当たる部分に小さな反転流があり、対岸の崖の岩の下がえぐれてそちらにも緩やかな流れが通っているようでした。
井伏鱒二の「山椒魚」ではありませんが、どうもこの岩穴に大型が潜んでいるように思えます。
試しに、岩の手前の本流筋に毛針を流してみましたが、あっという間に流れ去ってしまいます。
流れが速すぎて、毛針を沈めることすら出来ません。
次に、岩の後方部の渦巻き流を攻めてみましたが、アタリはありません。
最後に、崖下の岩穴にトライすることにしました。
ちょっと見ただけでは、岩の下がえぐれているようには見えません。水面下でえぐれているのですが、水流をよく観察しないと分からないポイントで、誰も攻めていないだろうという感じがします。
私の脳裏には、初めてテンカラでヤマメを釣った光景がフラッシュバックしていました。
合流点から上流は、川幅が少し狭くなり、樹木が多い茂っているような場所が多くなります。
私はラインを12ポンドテスト(3号)の蛍光イエロー・ライン3.8メートル+ハリス1号70センチに付け替えました。後方の引きがなくとも、自由に毛針を振り込める長さですね。
竿も予備竿の3.3メートルに替えます。
この竿は改造竿で、少し柔らかめです。竿の弾力を利用して、スナップショットで軽い糸を飛ばすためです。
この竿では、8メートルのラインは上手く飛ばせませんが、軽いラインはこちらの方が具合が良い。
次の写真は、上が竹株師推薦の超硬調テンカラ竿。下は、やや軟調の改造竿です。

超硬調テンカラ竿
やや軟調テンカラ竿
上流部はクモの巣との戦いでした。ポイント付近のクモの巣や、後方にある木の枝周辺のクモの巣など、最初に縦横にラインを振ってクモの巣を取り除いてから、釣りに入ります。
この時に使う毛針は、良く飛ぶように太軸で、ハックルはごく少量、色はクリーム系で、針先は折ってあります。木の葉などに不用意に引っかけないためです。
この時は、富士式の捨て針釣法、あるいは桑原式空中釣法を兼ねて、クモの巣刈りをしているのです。
ラインに付いたクモの巣は処理が面倒ですので、いったん毛針を切り離し本命毛針に付け替えます。
私のエサ釣りは五日市の秋川から始まりました。
体調を整え、3月1日の解禁日、解禁の合図を待って釣り人が一斉に竿を出します。
ところが、30分くらいで3、4匹のヤマメを釣った頃になると、くしゃみ・鼻水・悪寒が始まり、目がかゆくなり涙が止まらなくなる。
そう、ひどい花粉症だったのですが、当時は風邪をひいたと勘違いしていました。しっかりと体調を整えていたのに、残念!という後ろ髪引かれる思いで、早々に退散を余儀なくされました。
そのようなシーズンが続き、やむなく5月の連休以降からの渓流釣りとなりました。ところが、小さな秋川では、放流されたヤマメはほとんど根こそぎ釣られまくって、この時期にはほとんど釣れないのです。
午後になって、かなり上流部まで遡行していた私は、面白いことに出会いました。
仕掛けの目印に向かって、小さなヤマメがピョン、ピョンと飛びつくのです。流している川虫エサには気付かず、目印のシモリ玉に食いつく…。
そんなことがあって、私はエサ釣り仕掛けの目印に鮎の毛針を枝ス式に結び、エサ・毛針仕掛けを作り、試してみました。
けれども、この両刀使い方式は、どっちつかずでしたので集中力が散漫になり、失敗に終わりました。
これがきっかけとなり、テンカラ釣りの研究が始まったのでした。
私のテンカラ技術を短い文章で解説し尽くすことは難しいのですが、要点をまとめてみます。
(1) 極限まで軽いラインを使い、ピンポイントに毛針をフワリと落とす技術。
(2) ヤマメの定位する場所と、就餌点を見極める経験値の蓄積。
(3) 毛針の操作と合わせの基本。
(4) 宮本武蔵に学ぶ周辺視の極意
(5) ストーキング、木化け・石化け。
(6) 情報収集
思いつくままにリストアップしましたが、だいたいこの5つ+1に分類できるかと思います。
皆様が真っ先に飛びつく毛針の項目がないじゃないか、と思われるかもしれませんね。
ルアーでも、毛針でも、タナゴの連珠目印でも、真っ先に釣れるのは人様なのですが…
今回は、レベルラインのノウハウについて述べてみたいと思います。
釣りは、俗に「1場所、2エサ、3にウデ」と言われます。
魚のいるところに仕掛けを投入しないと釣りになりません。
メジナ釣りの場合は、「コマセ3年、潮読み5年」というように、魚を寄せる技術がありますが、ヤマメの場合は居着いている場所を見分けることが大切ですね。
以前、ミミズを細切れにしてコマセとして、大淵のアマゴを寄せて釣っている人の記事を読んだことがありますが、とんでもない話です。
渓流魚、とくに雪国のイワナなどはエサが少なくて、春先に釣ってもやせ細っています。
常に腹減らし状態の渓流魚に生きエサを見せれば、飛びつくのは必定、釣れて当たり前なのです。
コマセで狂わせて釣るなど、大馬鹿野郎のやることだと思います。
テンカラを知る以前の私は、エサ釣りをやっていました。
しかし、エサ釣りの経験が、ヤマメの習性を観察するのには大いに役立ったのです。
フライフィッシングでは毛針を自然に流すナチュラル・ドリフトを重視しますが、テンカラではアクションをつけてひくのが普通です。
この違いはどこから来るのかと言いますと、直接的には毛針の違いがもたらすものですが、根底には西洋と日本の文化的な違いが横たわっています。
フライフィッシングの毛針は精巧で緻密に作られたイミテーションですので、あくまでも自然に流して魚にエサだと思わせる…リアリズムの世界ですね。人間の目から見たリアリズムということです。
緩やかな流れで、キャッチ&リリースで学習したトラウトは、ラインの張力で不自然に動く毛針を極度に警戒する、ということもあるでしょう。
フライマンはマスの胃の内容物をスポイトで吸い出して、どんな虫を補食しているのかをチェックし、それに似たフライを使用します。科学的な分析思考で組み立てられた釣りです。
けれども科学というのは分別の学であり、本質的なものを直感的に把握する東洋的な思考とはアプローチが全く異なります。
和式のテンカラ毛針は一見して素朴で、逆さ毛針など実にファンタスティックで、どんな虫にも似ていません。無造作に巻かれた胴に蓑毛(みのげ)がパラリという感じ。
簡略化というにはあまりにも大胆な省略。西洋のフライフィシャーが見れば、すごくプリミティブだと思うでしょうね。
そして、漁師のテンカラを見ると、こんどは「何だ、これは!」と驚くのではないでしょうか。漁師が操る毛針は命を吹き込まれたように、融通無碍に動き回るからです。